夕暮れ症候群〜帰りたくなる夕方の時間帯

認知症型の介護施設では入所者にもそれぞれの症状があり、一概に「認知症とはこういうもの」と決めつけることはできません。

また入所時の認知度は過ごす期間が経過することで更に進み、自分自身を認識することができなくなっていきます

そんな過程を見ていると介護士も悩むことがあるものです。

愛すればこそ傷が深くなる認知症のトラブル

認知症が強くなると自分を認識することができなくなっていきます

最初は食べたものを思い出せない。

日付を忘れる程度ですが、特にアルツハイマー型認知症のなかには進行が早く日常生活も難しくなってきます。

ロビー1 (Unicode エンコードの競合)

昨日まで普通に洗顔していたのに、今日は顔が真っ白になっていることがあります。

よく見ると歯磨き粉が塗られていて、コント番組の殿さまみたいなお化粧になっているのです。

洗顔クリームとの区別がつかなかったのか・・・。

お化粧の下地のつもりだったのかは分かりませんが、一同大爆笑の中を悠々と歩いていたりするわけです。

笑いのある行動に驚かされながらも愛情込めてコミュニケーションをとっています。

しかし、なかには悲しい習性も記憶のなかに残っていることがあるようです。

とても綺麗な女性で凛とした佇まいは「本当に認知症?」と思えるほどで、日常の動作に介護の必要はなく、また会話も問題はありません

ただ、短期の記憶がまったくないので、1分前どころかたった今のことも覚えていないだけなのです。

入所以降ご家族にはお会いしたことがありませんでした。

ご家族と過ごした入所前に、相当のトラブルがあったらしく、息子さんもお嫁さんも顔を出すことはなかったのです。

あとから聞いたところによるとお嫁さんは相当に参っていたそうです。

義母が

  • ご飯を食べさせてもらえない
  • いじわるされる

ご近所に嘆かれていて、そのことを心配したご近所が息子であるご主人に伝えたことから、息子は堪りにたまったモノを爆発してしまいます。

お嫁さんは疑われたことによって傷つき、夫婦間もおかしくなって、最終的に施設に入所することになったようです。

こんな話はよくあることですが、それでもご家族やご親族が一度も顔を出さないというのも珍しいことだったのです。

「なんだか、かわいそう」というのが介護士たちの想いでもありました。

「私たちが支える」と思わせてくれた素敵な人

入所者のなかでも立ち居振舞いはずば抜けていました。

小柄な身なりはいつもスッキリとしていて顔立ちの良さもあってか男性陣からは大人気でした。

言い寄る男たちへのさばき方が上手で

介護士も「あー、モテ期がきたらあんな風にすればいいんだ

なんて軽口をたたくほどスマートな受け答えをしていたものです。

そんな「彼女」は毎日お昼以降の行事が終わると、自室に戻り和服に着替えます。

一見しても分かる高価な着物にキリリと帯を締め、背筋を伸ばして静々とやってきます

いつも通りの御挨拶を受け、最後に「こちらこそお世話になりました」と丁寧なお別れの言葉を頂くと、玄関の自動ドアの前に立ちます。

エレベーター前1 (Unicode エンコードの競合)

約1時間後に「今日はお見えになりませんでしたね」と声をかけても、ずっと自動で開かないドアの外を眺めています。

それから30分後「今日はお忙しいのでしょう。お部屋で待つことにしましょう」と声をかけると寂しそうに自室に戻ります。

入所のときに息子さんと一緒に来たのは夕方だったそうです。

「明日、迎えに来るから」と声をかけて帰られたそうですが、そのことを覚えているのでしょう。

毎日夕方になると、入ってきた玄関に息子さんが現れることを待っていたのです。

すべての記憶は一瞬にして無くなっていく

「迎えに来る」という言葉だけが記憶から消えないことに一層悲しくなり、介護士はみな「私たちが支えなきゃ」と思ったものです。

そんな想いをさせてくれた「彼女」が亡くなり、息子さんがご挨拶にこられました。

母一人子一人の家族で愛情一杯に育ててもらい感謝していたそうです。

前述のトラブルで妻への配慮もあり、母親とは死ぬまで逢わないと決めたということでした。

普段はご家族の気持ちを察してそんな事は言わないのですが・・・。

お見送りの玄関前で「ここで毎日待っていましたよ」とだけ伝えると、声をあげて泣かれていました。

もっと素直に接していればと残念に思った認知症介護のご紹介でした。

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