介護の悩み〜親が認知症で暴力を振るってくる どうしたらいいの?
「親が認知症で暴力を振るってくるようになりました。どうしたらいいですか?」
という質問を受けました。
今日はこの話題についてお話したいと思います。
認知症によくある行動・心理症状
認知症には、「中核症状」と「行動・心理症状」とがあります。
認知症における暴力は、行動・心理症状に分類されます。
「行動・心理症状」という言葉は聞き慣れないかもしれませんが、BPSDという言葉は耳にしたことがありませんか?
この「行動・心理症状」の意味“behavioral and psychological symptom of dementia”の頭文字を取ったものがBPSDです。
私は以前、看護師として療養型病棟に勤務していました。
こちらは治療が安定し、施設入所に向けて退院を目指す患者様が入院される病棟でした。
この病棟で勤務している時、看護研究というものでこのBPSD(行動・心理状態)について取り組んだことがあります。
入院中の患者様に、暴力が酷くて必要な看護が行えない事がありました。
治療を効果的に行い、施設入所に前向きに進めるようにという私達の思いから、暴力行動をどのように解決していくかが課題でした。
病院と施設、違いが分かりますか?
夜間眠れない患者様がいらっしゃると、安眠できるように睡眠薬が処方されるのが病院。
これに対し、夜間寝られないなら昼間の行動を見直し、寄り添うなどの対応で睡眠薬などに頼らず入眠を促す努力をしているのが施設。
病院では「治療」がメインになるので、すぐにお薬に頼ってしまうんですね。
日中も、日常生活が送れるよう、不足している部分に対して必要な看護を行うのが病院。
色々と日程が考えられ、利用者様個々に必要なレクリエーションなどを取り入れて活動していくのが施設。
施設はレクリエーションで外出したり、色々なイベントがありますので四季を感じることが出来ます。
さて、話を戻しましょう。
BPSDは、認知症が軽度から中度に進行した時に多く出現する傾向にあります。
主な症状として、行動においては徘徊や拒絶、攻撃的な行動、(被害)妄想などがあります。
心理状態においては抑うつ状態や睡眠障害、人格の変化などが挙げられます。
「コイツが私のお財布を盗んだ!」と、普段介護しているお嫁さんを犯人にしてしまう高齢者というのはよく耳にするお話ですね。
この行為は物取られ妄想と言い、BPSDのひとつです。
いわゆる被害妄想は、一番身近に介護している人に向けられる傾向があります。
ご本人が大切なものだからと誰にも気づかれないような場所に財布を隠す。
しかし、認知機能の障がいにより、隠した場所を思い出せなくなる。
探してもいくら見つからないとなると、一番身近な人が犯人なのではないか、と思い込んでしまうんです。
ここでご家族が感情的に鳴なり、「誰も盗んでなんかいない。自分がボケて、どこに隠したか忘れたんだろう」などという言葉をかけてしまったらどうでしょう。
実は認知症だからというわけではなく、ご家族の発言が暴力に繋がることがよくあります。
これは自尊心が傷つけられているという怒りの表れです。
暴力行為に対する接し方
親御さんが認知症になって、今までなかった暴力を受ける、これはとてもショックですよね。
認知症であっても、感情はしっかり残っています。
暴力を回避するために接触を避けてしまうのは考えものです。
ご本人は「避けられている」「放っておかれている」などとマイナスな感情を抱き、状況が悪化していく可能性もあります。
きちんと向き合い、傾聴する姿勢はとても大切です。
ご家族ですから言うまでもありませんが、信頼関係をきちんと築くことが大切なんですね。
親御さんが暴力行為を行った時、まずは少し距離を置きましょう。
感情的になっているところに、無理に押さえつけたりするとますますエスカレートしてしまいます。
しばらく離れて様子を見て、落ち着いた頃に優しい声がけをするといいでしょう。
また、介護する際、家族だからと無言で行動を起こしていませんか?
いきなり触られたり何かされようと思えば、誰でも驚きます。
これが暴力に起因することもあります。
介護する際は必ず、声をかけてから行うように心がけましょう。
かといっていきなり「体動かします」と声をかけられたら、状況によってはとても驚くことがあります。
皆さんにも思い当たる節はありませんか?
読書中にいきなり後ろから声をかけられたりすると、「ビクっ」となってしまうような体験。
これを防ぐためには、ワンクッション言葉を使うといいですよ。
これは「あ、」とか「あの、」というように、言葉を話す前に一声入れるものです。
是非、声がけの際、試してみてくださいね。