老人ホーム選択のポイントとして料金ばかりに目が向きがちですが、もっと大切ないくつかの要素があります。
まず現在の状態、特に要介護度は入居条件に結び付くため必須要因ですし、今後状態の変化により同じ施設に居続けることが出来るかなどは重要な検討課題です。 もちろんご本人の希望も大事ですので、条件の範囲内で希望に沿った施設をお選びになることが大切だと思います。 予算的な条件を加えたいろいろな要件を検討したうえで、施設を選んでいくというスタイルになります。
それら多くの項目を考慮しながら一つ一つの施設を検証するのは大変な作業になります。なので老人ホーム選びに悩まれている方には以下のような方法をお勧めしています。あくまで参考事例ですからこの通りにやる必要はありませんが、何から手を付けたら良いか迷っている方は参考になさってください。では、手順に従ってそれぞれの内容について細かく見ていきましょう。
現在の状況を整理する
- 老人ホームに入る理由
- ご本人の状態
- 年齢・要介護度 入居条件に関わる大事な項目です。きちんと明示しておきましょう。
- 健康状態・持病 必要な介護サービスを選べるかの判断基準になります。服用している薬の種類などもここで洗い出しておきます。
- 認知症の有無・程度 施設選びの条件で特定の要件を満たす必要があります。認知症がある場合は軽度か重度で受け入れ可否が変わります。グループホームは認知症でなければ入居出来ません。
- 経済状態
「日常生活で生活支援を受けたい」「介護サービスが受けたい」「リハビリで元の生活に戻りたい」、何らかの理由があって老人ホームを選ぼうとしているはずです。まずその理由を明らかにしましょう。理由が複数ある時には全て書き出します。 ここをはっきりとさせておくことが老人ホーム選びの大切な出発点になります。ご本人と配偶者、支えるご家族、ご親族など、特に費用を負担する方々には状況をはっきりと共有する必要があります。ここがしっかりしていないと話し合いの際にトラブルの元になりますので重要なポイントになります。
気になる金銭面です。ご本人の資産と今後の収入、家族からの支援を含めて予算として計算します。ひと月あたりで計算して、取り崩し可能な資産額と受けられる支援の額を洗い出します。最初はざっくり予算枠として○○万円ぐらいと設定しておいて構いませんが、検討が進むにつれて合計金額だけでなく誰がいくら負担するかまで明確にしていきます。一時金が必要となる施設もありますので、最初にいくら用立てできるかも試算しておいた方が良いです。 費用の方は入居一時金と月額利用料が基本になりますが、生活介助・介護のサービス料金や医療費・薬代・移送料金・日用品などが加わりますので無理なく払い続けられる程度の予算設定が必要です。また現在の収入だけでなく、先々の収入が変化することも見越して予算設計します。
本人の希望を洗い出し、優先順位をつける
ご本人の希望は施設選びの最重要事項です。今後の人生設計をする上で入居から最期までをイメージする中で大事にしたいことを明確にしていきます。 真っ先にこの作業を行っても良いのですが、ただ漠然と希望を問われてもなかなか出てこないと思います。そのために先に明らかにした現在の状況を手掛かりにして希望条件を洗い出していきます。 ご本人が望まれる生活、必要なケア、入居時期、立地場所、レクリエーションやイベント、サークル活動、食事内容など思いつくままで構いませんのでいくらでも列挙してください。 出尽くしたら優先順位を決めます。全ての項目に優先順位を付けることが出来ればそれに越したことはないですが、なかなか難しいと思います。そこで絶対に譲れない条件を3つ選び出してください。他の項目は可能であれば選択肢となる希望項目となります。
ここまでで老人ホームを選ぶのに必要な情報が出揃いました。 このあといよいよ施設選びに入ります。
入居先候補を絞り込む
施設選択の際に最優先の「必須項目」3つを満たす施設の中から、「希望項目」が多く叶う施設が入居先候補になります。 希望項目の中にも優先度がある場合は項目ごとに10点(優先度高い)~1点(妥協できる)のように点数をつけて施設ごとに評価し、合計得点の高い施設が有力候補になります。検討中に希望項目の入れ替えや点数の付け替えをした場合はその都度評価を行ってください。 ただし必須項目の数はなるたけ変えないようにした方がいいです。新しい項目を入れる時はどれかを外すようにして常に個数はキープすること。どうしても譲れない場合は4つ目を追加でもいいですが、6個、7個…と必須項目を増やすよりは次点で10点の希望項目に追加した方が良い施設が見つかる可能性は高くなります。
希望する施設を選び出す
入居先候補から予算等を加味して最終候補を選びます。総合評価になるので施設ごとに丁寧に選り分けします。候補が複数残るようであれば優先順位をつけておきます。候補が残らない場合は希望条件を見直します。
その他参考になる情報源
相談先について
老人ホーム入居の相談が可能な公的窓口として市区町村の福祉課と地域包括支援センターがあります。特別養護老人ホームやケアハウスなど、公的な介護施設への入居を検討されているのであればこちらの窓口に相談をすることができます。 またご自身や家族が要介護・要支援認定を受けており、介護保険サービスをご利用されているのなら、担当のケアマネジャーに相談してみることもできます。ただし老人ホーム紹介は本来ケアマネの職務ではないため、詳しい情報が得られない場合もあります。 いずれの相談の場合も現在の状態と希望する要点がまとまっていた方がお話ししやすいです。
入居見学や体験入居について
施設によっては入居見学や体験入居を行っている施設があります。施設内や職員の様子など直接見ることが出来るのは施設選びの上で大変参考になります。昨今のコロナ禍の影響で外部からの立ち入りを制限している場合も多く、多くの施設を見学して比較するということが難しくなっています。こういう時代こそ事前の調査が重要で、パンフレットや資料などを取り寄せての検討が必要になります。闇雲に資料を取り寄せるより候補を絞ってから資料請求をした方が効率が良くなります。
老人ホームを選ぶポイントはいろいろありますが、重要視する点は人によって様々です。大切なのはご本人の意思を確認して、それを周囲の方と共有すること。世間的に人気の高い施設が、その人にとっての最良のホームであるとは限りません。「良い」施設より「自分に合う」施設を選ぶことが老人ホーム選び最大のポイントです。